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ビーチを去る者、新たな気持ちで挑む者。「マイナビファイナル大阪大会」女子最終日。

2021.10.19

「マイナビジャパンビーチバレーボールツアー2021 ファイナル大阪大会」最終日が10月17日、大阪府大阪市北区・毛馬桜之宮公園内大阪ふれあいの水辺で開催された。雨模様が心配されウォームアップ時には雨が上がったものの、20℃という肌寒い空気に包まれた桜ノ宮。ついにツアー6戦目のフィナーレを迎え、男女準決勝、決勝が行われた。

ビーチバレーを続けてきた原動力
石坪聖野(アットホーム)/柴麻美(帝国データバンク)組と橋本涼加(トヨタ自動車)/村上礼華(トヨタ自動車)組の対戦となった女子準決勝第2試合。この大会を最後に引退を表明していた石坪は敗れた時点で、現役生活にピリオドを打った。

石坪は、アンダーカテゴリー時代にシニア代表に選出された実績もあり、高校、大学と常にトップクラス。そのときに身につけた技術を武器に大学を卒業してからも東京五輪出場を目指し、世界を転戦してきた選手の1人だ。ビーチバレーを続けてきた原動力は、どんなところにあったのだろうか。

ファイナル大阪大会準決勝が最後の試合となった

「小学校の時に実兄が病気で運動ができない身体になってしまった。その分、バレーボールをやっていた私は兄の分も好きなことに打ち込んでがんばろうと思った。あとは大きい存在だったのは(鈴木)千代さんという先輩。その背中を見てついていきたかった」と明かした。

石坪は鈴木に必死でついていき、日本トップクラスへと上り詰めた。そしてその石坪の背中を見てきたのが、産業能率大の後輩、山田紗也香である。

「私が高校3年のときに聖野さんとペアを組んでサテライト大会で優勝した。その結果がなかったら、私は今大学でビーチバレーをやっていなかったし、ここまで続けることができなかった。私にとって恩人である聖野さんと1回戦で対戦して、寂しい気持ちと勝ちたい気持ちがまざってすごく複雑な心境だった」と涙ながらに語った。試合後、山田はその気持ちを抑えきれず、石坪と抱擁をかわしていた。

後輩たちに惜しまれつつ、最後の試合を終えた石坪。今後は社業に専念するという。
「アットホームは働きたくて入社した会社だったので、このタイミングで働く社会人としての経験、知識、マナーを身につけて年を重ねていきたい。もちろん、ビーチバレーがやりたくなったらやるかもしれないけれど、今は社業をがんばりたいと考えています」と、新たな道への第1歩を踏み出した。

一番左が山田。産業能率大OGと一緒に

新女王の意地
女子決勝は、長谷川暁子(NTTコムウエア)/坂口由里香(大樹グループ)組と橋本/村上組の戦い。両者の対戦は第4戦名古屋大会以降、3度目でここまで両者とも1勝1敗だった。ファイナル大阪大会は、真の女王を決めるふさわしい決勝戦となった。

しかし、試合は前回大会から長谷川のワンブロック、坂口のワンレシーブ体制で挑んできた長谷川/坂口組が序盤から主導権を握る。「最後は自分の仕事ができなかった」と橋本が振り返ったように、長谷川/坂口組の速いテンポの攻撃は大きく崩れることなく、得点を重ねていく。第1セット、第2セットともに危なげない戦いぶりで今季3勝目をあげた。

今季3勝目、年間チャンピオンに輝いた

ペアの初戦となった第2戦平塚大会では優勝したものの、その後2大会は優勝から遠ざかった。「最初は手探りの部分があったし、ツーブロックでもいいと思っていた」と長谷川は振り返る。しかし、優勝できなかった悔しさが、長谷川/坂口組の結束を強くさせた。

「お互いの負けず嫌いの気持ちが出始めて、そこから練習を組み立てるようになった。相手チームが嫌なことは何かと考えたら、それは由里香のレシーブで私のブロックだと思った」と長谷川はポジション変更に向け、決心した。

サーブに重点を置いている長谷川

ペア結成時は、サーブに力強さを感じられなかった長谷川だが、ブロックポジションに絞ったことでサーブ後の重心移動を利用し鋭さも徐々に増していった。決勝戦ではスピードサーブが効果的に決まっていた。
「サーブで攻めていかないと世界でも勝っていかない。重点的に練習してきた成果が出た」と長谷川は及第点をつけた。

長谷川/坂口組は、11月にワールドツアーブラジル大会への出場を予定。このチームで初めて世界に挑むことになる。「日本チームはすごいんだ、ということを見せつけたい」と坂口。新女王は日本のビーチバレーをけん引していけるのか、注目していきたい。

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