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新たな扉を開いたデフ日本代表。熱気に包まれた「東京2025デフリンピック」閉幕

2025.11.19

「東京2025デフリンピック」ビーチバレーボール競技が11月23日、東京都大田区にある大森ふるさとの浜辺公園で行われた。男子の今井勇太(田辺三菱製薬)/瀬井達也(INPEX)組が3位決定戦へ進出しウクライナに敗れたものの、過去最高位の4位。女子はシングルトーナメントに進出した伊藤碧紀(LIVZON/大東文化大)/堀花梨(LIVZON)組は5位タイ(過去最高位)で終了した。デフビーチバレー日本代表は地元開催の「東京2025デフリンピック」で新たな歴史の扉を開いた。

過去最高位4位でフィニッシュした瀬井/今井組

 プール戦初日からスタンド席は満員状態だったが、最終日は入場制限がかかるほど想定を上回るほどの観客が詰めかけ、会場の熱気は高まっていた。デフリンピックに日本が初めて参加したのは2009年台北大会から(正式競技になったのは2005年メルボルン大会)。2011年から代表の監督を務め、幾度もデフリンピックを経験してきた牛尾洋人氏(日本デフビーチバレーボール連盟理事長)は、今大会で見た光景についてこう語る。

「過去のデフリンピックを見ても観客席には関係者しかいないような大会やルールや規制も甘い大会もあった。そんな中、今回は観客動員数が10万人を突破し、日に日に認知度も上がってきた。ろう者の方や外国人も多く、東京都の宣伝の効果は大いにあったと思う」

 いつもと違うデフリンピックだということを、一番実感しているのは4回目の出場となる男子代表の瀬井だ。「これまでのデフリンピックの会場には観客はほとんどいませんでした。地元の方々さえも。今回はいろいろな方々が試合を見に来て下さり、ビックリしているし本当にうれしい」としみじみと想いを口にした。

立ち見の観客が見守る中、行われた3位決定戦

 そして、選手全員が口を揃えてコメントしていたのは「応援の力」だった。八木沢美穂は「応援うちわを見て試合中前向きになれた」と語り、今井は「普段の2倍の力を出せた」と振り返るように、過去最高位の成績を出せたひとつの要因となった言っても過言ではないだろう。

 一方で、堀が「試合中も緊張が続いていた」、境出ゆきえ(三幸学園)が「緊張がマックスだった」と述べたように自国開催の重圧や大一番でのメンタルコントロールに課題を残した。 伊藤/堀組は、2勝1敗といい形でシングルトーナメント進出を決めたものの、ベスト4がけの試合で「2人で話し合ってきて試合に臨んだが、ずっと緊張が続いていた。もっと落ち着いてプレーしたかった」と堀は涙を流した。
 伊藤も「試合の前夜は眠れず、ご飯もなかなか喉を通らなかった。いつも通りにできなかったことが力を発揮できなかった原因だと思う」と吐露し悔しさをにじませていた。

悔しい5位タイに終わった伊藤/堀組

 男女ともに過去最高位の結果をたたき出したが、その喜び以上にメダルに手が届かなかった悔しさと世界との差、そして未来への課題が浮き彫りになった。43歳のベテラン・瀬井は「正直言って、技術の差はない」と断言しつつ、欧州勢との決定的な違いとして「環境と経験の差」を挙げた。
 欧州では選手権大会が頻繁に行われ、実戦経験を積み重ねる環境が存在する。「私たちにはそういった環境がない。その部分で経験の差があった。今後は環境をよくなり、経験を増やしていけば、いずれ世界のチームと五分五分になる。前々回、前回ベスト16で今回がベスト4になった。強化費がもらえれば環境もよくなっていく」と期待を寄せていた。

 パートナーの今井も世界との差について、「自分たちは健常者の大会にも参加することもあるが、外国人選手たちは聞こえる人と変わらないプレーでコートを俯瞰して見ることができていると思う」と冷静に分析していた。

試合後、課題を振り返った今井

 課題を突き付けられたが、未来に向けて明るい材料はある。女子は全員が今大会が初出場であり、堀や八木沢のようなパワフルなブロッカーも健在。とくに八木沢は今年3月からビーチバレーを始めた身長179cmの大型選手だ。「まだまだ経験値や戦術のセオリーの知識が足りない。ただ、3月の時点では砂に慣れずスパイクを空振りしていたことを踏まえると、そこから自分は成長してきたと感じている」と手ごたえを掴んでいた。

女子期待の大型プレーヤー・八木沢

 今大会を通じて、選手たちは「経験」という価値とデフスポーツの未来に可能性を感じたに違いない。瀬井は「デフスポーツの認知度が低かったため、これまではサポートも少ない場面もあった。障がいスポーツの認知度が高まることで、重複障がい者もサポートされる機会が増えていく。今回のデフリンピックがそんなきっかけになればいいと思う」と社会全体を見据え、切なる願いを込めた。

初出場で9位タイとなった山本/寺井組

最終順位
【男子】
1位  Henrik Templin & Tobias Franz (ドイツ)
2位 Jakob‑Lars Kurzmann & Nikita Tkachenko(オーストリア)
3位  Serhii Tarasov & Anton Koshkarov(ウクライナ)
4位 瀬井達也/今井勇太(日本)
9位タイ 寺井捺貴/山本将隆(日本)

男子表彰式

【女子】
1位 Yuliia Chernenko & Raisa Rylova(ウクライナ)
2位 Jakob‑Lars Kurzmann & Nikita Tkachenko(リトアニア)
3位  Serhii Tarasov & Anton Koshkarov(イタリア)
5位タイ 伊藤碧紀/堀花梨(日本)
11位タイ 境出ゆきえ/八木沢美穂(日本)

女子表彰式

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