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数々のドラマが生まれたマイナビジャパンツアー沖縄大会。チャンスをモノにしたチームたち【女子編】

2021.12.02

 新型コロナウイルス感染拡大防止対策のため、延期されていた「マイナビジャパンビーチバレーボールツアー2021第3戦沖縄大会」(以下・マイナビジャパンツアー沖縄大会)が11月27日、28日、沖縄県豊見城市のオリオンECO美らSUNビーチで開催された。

 この大会はアジア選手権開催のため、日本代表チームが不在。これまでの大会とは大きくシードが入れ替わり、数々のドラマが生まれた大会となった。男子編に続いて女子編をお届けする。

最年少ペアの快進撃
 女子は、大学2年生で最年少ペアの伊藤桜(産業能率大)/野口彩陽(産業能率大)組がワイルドカードで出場した。1回戦は坂本実優(キュービック・スポット/ KLB )/沢目繭( ミライラボバイオサイエンス株式会社/ 湘南ベルマーレ/KLB )組、準決勝では村上めぐみ(オーイング)/藤井桜子(立飛ホールディングス)組ら、ベテランペアを次々に破って決勝進出を果たした。

 伊藤/野口組は、単なるフレッシュさ溢れる大学生ではない。その存在感と実績は計り知れない可能性を持っているチームだ。野口の両親は1990年代に活躍した元プロビーチバレープレーヤー・野口拓也さんと幸子さん。正真正銘のビーチサラブレッドであり、その持って生まれたバレーセンスを武器に横浜隼人高時代には春の高校バレー出場、マドンナカップで準優勝を果たしている。

ビーチバレー経験者の両親を持つ野口

 思い切りのいいプレーを最大の武器とする野口を操るのは、高校時代からビーチ経験がありゲームメイクを担当している伊藤だ。伊藤/野口組は大学1年時に大学選手権でベスト4入りを果たし、今年は3位入賞。さらにU23選手権を制した。大学2年生とは思えない技術力の安定感とメンタリティの強さは兼ねてから注目されていた。

 その2人にとって初のマイナビジャパンツアーはまさに怒濤の快進撃だった。その裏には伊藤のこんな想いがあった。「川崎市杯のときにあっさり負けてしまい、同じ思いをしたくなくなかった。ツアーまで2週間しかなかったが、攻撃面やサーブにおいて細かく修正を図った。沖縄まできて、たった1試合で帰りたくなかった」(伊藤)。
 練習の効果はコートで表れた。格上のチームに対し、シンプルな攻撃とテンポの速い攻撃を織り交ぜ、相手チームにディフェンスの的を絞らせなかった。初戦に勝利した野口は「勝ったとき、一番に思うことは、伊藤が私の力を引き出してくれて安心してプレーができたということ」と喜びをかみしめた。

 決勝戦では松本恋(Mt.dogs)/松本穏(Mt.dogs)組にフルセットの末あと一歩のところで敗れたが、伊藤は「悔しい以上にもっと強くなりたいという気持ちが増した大会となった。来シーズンは実力でジャパンツアーに出られるようにがんばりたい」と健闘を誓った。

メンタルの強さが持ち味の伊藤

松本姉妹が封印した武器
 今季、ワイルドカードで初めてマイナビジャパンツアーに出場して以降、注目を集め続けてきた松本恋/松本穏組。上位チーム不在となり第3シードで出場した沖縄大会では、ついにマイナビジャパンツアーの頂点にのぼりつめた。準決勝では、橋本涼加(トヨタ自動車)/村上礼華(ダイキアクシス)組、決勝戦では勢いのある伊藤/野口組をともにフルセットゲームで競り勝った。

 今大会は「砂が固かったので身長が低い自分たちにはよかった」というパワーヒッターの恋が、持ち前の滞空力を発揮し躍動感を見せた。「トスを上げないと『持ってこい』と恋が怒る」と 穏が振り返ったように、松本姉妹最大の武器である正確でスピーディーなワン・ツー攻撃を封印。それでも勝利を得た価値ある大会となった。

女子決勝戦。フルセットのデュースにもつれ込んだ

 妹の穏は、その戦術について「ワン・ツー攻撃は決まるチームには有効だけれど、決勝戦の相手はコートを走り回っていたので、ボールを浮かすよりはシンプルにしっかり攻撃していこうと思った。何をするのか知られている状態で仕掛けるのはよくない。自分たちと相手のコンディションを判断することが大切」と述べた。

 松本恋/松本穏組にとってペア結成4年目となった今シーズンは、飛躍の1年となった。シーズンを締めくくった沖縄大会の会場は、2年前に家族旅行した思い出の地だったという。
「まさか、そのときにここで大会があるなんて思わなかったし、いつか大会に出られたらいいね、としか思っていなかった。今があるのも、今季地域のワイルドカードとアクティオワイルドカードで出場させていただいたことに尽きる。これからオリンピック出場を目指す以上、アジア選手権に出場している代表チームを倒していかないといけない。これで満足せず、しっかり勝っていけるようにしたい」と来季へ抱負を述べた。

思い出の地でツアー初優勝を果たした松本姉妹

 これにてマイナビジャパンツアーの全日程7大会は終了。来季は2024年パリ五輪に向けた新シーズンを迎えることになる。

写真/小早川渉

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