2025.08.13
「JVA第39回全日本ビーチバレーボール選手権大会男子」が8月11日から13日、神奈川県藤沢市鵠沼海岸で行われた。都道府県予選を突破した48チームと推薦8チーム、合計56チームが集結した。
灼熱の太陽、燃えるように熱い砂、めまぐるしく変わる海風、1日2試合3日間という長丁場。ビーチバレーにかかわる要素がぎっしり詰まっているのが、この大会。日本のビーチバレーボール大会が始まった原点の地でもある。
今年は、全国各所で強風、雨に見舞われ、この大会も例外ではなかった。初日は太陽の日差しや暑さとは無縁、冷たい雨が降りつ続いた。海側と陸側を両エンドにしたコートにおいて、海側から傘が壊れるほどの強風が2日間、吹き続けた。グッドサイド、バッドサイドがくっきりと分かれた環境下で、ベスト4に勝ち残ってきたのは第1シードの黒川寛輝ディラン(LIVZON)/長谷川徳海(ハウスコム)組、日本代表の黒川魁(NTTドコモソリューションズ)/安達龍一(トヨタ自動車)組、初登場ペアの石島雄介(ゴッツfamilyクラブ)/立谷純太郎組、そして東京都代表の水町泰杜(トヨタ自動車)/黒澤孝太(明治大)組だった。
最終日はそれまで吹いていた強風がぴたりと止んだ。準決勝第1試合ではジャパンツアー2勝を収めている優勝候補筆頭の黒川/長谷川組が石島/立谷組を2-0で振り切り、決勝進出を決めた。
準決勝第2試合は、黒川/安達組が先行するが、水町/黒澤組がサーブポイントを含めた脅威の追い上げで同点に追いつくと、両者一歩も引かずにデュースが繰り返される。少しずつディフェンスの形を取り戻した水町/黒澤組がブロックポイントを決め、32-30と勝負をつけた。第2セットは「1セット目取りたかったという気持ちが強すぎて切り替えられずに、次のセットに入ってしまった」と安達が振り返るように受け身にまわった黒川/安達組を引き離し、21-11と水町/黒澤組が決勝進出を決めた。
決勝戦は、自身5回目の優勝と連覇を狙う長谷川と自身2回目の優勝を狙う黒川の経験値の高いペアと、もし優勝を果たせば、大学生として第27回(2013年)に優勝した髙橋巧(大学4年時)、2年目で優勝した村上斉ペアの記録に並ぶ黒澤(現在4年)と水町(2年目)の若手ペアの対決となった。
第1セットは、今大会勝負所でブロックポイントを奪ってきた黒澤のブロックを黒川/長谷川組がしっかりかわし、コートにボールを落としていく。なかなかリズムに乗れない水町/黒澤組に対し、ミスの少ない安定したプレーで逃げ切った黒川/長谷川組が第1セットを21-19と先取した。
第2セットは「昨日までとは違い、風がなかったので、本来の自分たちのバレーを仕掛けることができた」と水町。ネット際ギリギリに出したサーブレシーブボールに威勢よく飛びつき、攻撃のフェイクモーションから速いトスを繰り出していく。ブレイクの場面でも水町が甘くなった相手のショットを拾い上げ、すかさず強打を決めていく。アグレッシブに攻め続けた水町/黒澤組が第2セットを22-20で奪い返し、国内トップチームから初めて1セットをつかみ取った。
勝負の行方は最終セットへ。長谷川がブロックポイントを決めれば、長谷川のブロックを水町は弾き飛ばすように強打を放っていく。まさに力と力のぶつかり合いは一進一退の攻防戦が終盤まで繰り広げられ、どちらが勝ってもおかしくない展開に。
「ああいう場面では強打を打って決めていきたい」と水町と黒澤。しかし、そこに待っていたのは「嗅覚のいい」(水町)長谷川のブロックだった。黒澤の強打をドンピシャリと止めると、17-15でゲームセット。39回目の王者に輝いた長谷川は「この大会は特別な大会。この盛り上がりは、幸せな空間」とヒーローインタビューで喜びを爆発させた。
これでジャパンツアーを含め、今季3勝目をあげた黒川と長谷川。しかし、長谷川は「チーム力が上がっている実感は自分たちにはない。なぜなら、コーチからの要求は高いし挫折することもある。けれども、ディランが成長した部分をあげるとすれば、ミスした後、次の手を仕掛けるとき、その修正するスピードは速くなっている」と語った。
黒川も「以前、ミスするときは意図がないものが多かった。今は全部の取り組みに意図を持ってやっているので、たとえミスしてもそこに意図はあると思っている」と変化を口にした。
一方、ともに初出場ながらビッグトーナメントを勝ち上がってきた水町/黒澤組は準優勝。「ペアとしてよくなっていて、できることも増えてやりたいことができた。トーナメントはしんどい山に入ったけれども、一戦一戦戦って、最後までこられた。とても楽しかった」と試合後の取材で水町は晴れ晴れと語った。
試合直後はうなだれていた黒澤だったが、表彰式の後は「ひりひりした局面でも、ただがむしゃらにやっていたわけではないし、頭も使って身体も思い切り動かすことができた。泰杜さんが試合中に『楽しいな』と言っていて、自分もすごく楽しく試合ができた」と笑顔をのぞかせた。
黒澤はこの後、明治大バレーボール部の活動に合流するため、今シーズンは水町/黒澤組はここで一区切り。水町はジャパンツアーグランフロント大阪大会で組んだThomasHartlesとペアを組んで出場予定となる。
プレー写真/松永和章
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