2025.08.12
夏の高校女王を決める大会「マドンナカップin伊予市 JVA第29回全日本ビーチバレーボール高校選手権大会女子」が8月7日から10日の日程で行われた。恒例となった会場の伊予市五色姫海浜公園ビーチバレーコート(愛媛県伊予市)には、秋田県をのぞく全国46都道府県から48チームが集まった。
毎年、マドンナカップは時節柄、灼熱の炎天下での戦いとなり、選手は対戦相手とともに暑さへの対応、3日間に渡る試合へのスタミナも要求される。しかし今年は、曇天の日が多く、気温も灼熱と呼ぶほど上がることはなく、プレーしやすい環境が続いた。ただし、最終日は小雨ながら低気圧と発達した前線の影響でビーチには強風が吹き、その風がゲームを左右した。
最終日の4強には、京都の橘柚希(福知山成美高3年)/長田瑠菜(同高2年)組、徳島の前田くるみ(鳴門渦潮高3年)/舟井萌(徳島市立高3年)組、そして地元愛媛の2ペア、境心葉(FC今治高2年)/首藤真奈(西条高2年)組と村上観月(松山中央高3年)/宇都宮萌里(西条高2年)組が残った。
1997年の第1回大会から愛媛県で開催されてきたマドンナカップだが、トップ4に県勢2チームが入るのは、第2回大会(1998年)以来27年ぶり。優勝すると第6回大会(2002年)以来23年ぶりとなるため、地元の期待と声援は高まった。
準決勝、境/首藤組は、橘/長田組と対戦した。常に6〜7m/sの風が吹き、時折9m/sを超える突風が吹くコートコンディション。愛媛の境/首藤組に地の利があると思われたが、この日はいつもの西から吹く海風とは異なり、南からの突風を含んだ強風。このビーチをよく知っているだけに、逆に戸惑うシーンも見られた。
対する橘/長田組は、マドンナカップ過去6回の優勝を誇る強豪校の福知山成美高であり、風に対する経験値は高い。第1セットをグッドサイドで始めた橘/長田組が5-0と序盤から走りペースを掴むと、戸惑う堺/長田組を尻目に、しっかり風を頭に入れたプレーで第1セットを21−16で取った。第2セットも、境/首藤組に先行されたが中盤に追いつき逆転、21−15で奪取し、セットカウント2−0で決勝へ進んだ。
愛媛の境は「私たちはこれだけの風の中でプレーしたことがなく、相手の技術の方が高かった。自分たちの粘りのバレーが得点に繋げられなかった」と敗因と話した。
もう一方の準決勝、村上/宇都宮組は、前田/舟井組と対戦。このビーチで練習している村上も「こんな風は経験がない」という状況の中、競り合うゲームとなった。前田/舟井組は本来、ブロックにしっかり跳び、オーバーセットも多用し速いテンポで強打が打てる攻撃型のチーム。しかし、風に翻弄されチームの良さを出しきれなかった。ともに1セットずつ取り、第3セットも最終盤まで拮抗した展開になった。双方10点を超えバッドサイドに回り不利になった村上/宇都宮組だったが、そこから宇都宮の強打が2本炸裂。最後も宇都宮のハードヒットで試合を制した。
決勝戦、愛媛県に23年ぶりの栄冠をもたらすのか、期待された村上/宇都宮組だが、対する橘/長田組も、意地でも勝ちたかった。特に橘はマドンナカップ3年連続の出場。しかし2年前は1回戦敗退、昨年は最終日まで進むも準決勝に敗れ、3位決定戦も落とし4位に終わった。マドンナカップに一時代を築いた福知山成美の選手としても女王のタイトルを取り戻したかった。
村上(164cm)/宇都宮(170cm)組と橘(163cm)/長田(162cm)組。宇都宮の高さと強打で攻撃に勝る愛媛に対し、福知山成美伝統の機動力と個々の技術で高さの不利を覆そうとする京都。ゲームはグッドサイドでいかに点を取り、バッドサイドでいかに我慢するか、風によるミスを極力減らせるかがポイントとなったが、第1セットから競った展開となった。最終盤、グッドサイドに回った村上/宇都宮組が抜け出し、21−19で第1セットを取った。
第2セットは、常に自分たちを鼓舞する橘/長田組の声が一段と上がった。「第1セットを取られて焦りもあったが、第2セットからは声で自分たちのムードをつくれた」と橘は話す。お互いミスも多く、良さを出しきれないプレーが続いたが、橘/長田組は相手の宇都宮に強打をほとんど打たせず、試合の流れは橘/長田組に傾いた。橘/長田組が21−16で第2セットを取ると、その流れのまま最終セットへ。11−11と終盤まで競ったが、ここでグッドサイドの村上/宇都宮組が、手痛い2ポイント連続でスパイクミス。第3セットを橘/長田組が15−12で取り、セットカウント2-1で優勝を決めた。
橘/長田組の優勝で、福知山成美高、京都勢としては3年ぶりにマドンナカップを取り戻した。敗れはしたものの愛媛県勢は準優勝、境/首藤組も3位決定戦に勝ち表彰台に上がり、2、3フィニッシュとなった。
長田は「力みや焦り、決勝の雰囲気などもあって、うまくプレーはできなかったけど、絶対に負けたくなかった。負けず嫌いが良い方に出た」と嬉し涙。3回目の出場でようやく優勝にたどり着いた橘は「ずっとマドンナに出させてもらっても周りの人に良い報告ができなくて申し訳なかった。今年も勝てなかったらどうしようと自分の中で葛藤もあった。優勝できて嬉しいけど、実感はまだなくホッとした気分」と話した。
今大会の有望優秀選手賞には、橘、長田、村上、宇都宮、尾崎こころ(兵庫・親和女子高)、旦代季桜良(山形・米沢中央高)、松本瑠奈(香川・高松商高)、務台真己(長野・松商学園高)の8人が選ばれた。
撮影・文/小崎仁久
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